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「命を尊いと思う心」を育てる畜産  

久住 牧野の博物館 増田泰久

内閣府HP「食育基本法と食育推進基本計画」には、『近年、国民の食生活をめぐる環境が大きく変化し、その影響が顕在化しています。例えば、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、食の海外への依存、伝統的な食文化の危機、食の安全等、様々な問題が生じています。このような問題を解決するキーワードが「食育」です。食育基本法では、「食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている』と書かれています(http://www8.cao.go.jp/syokuiku/about/index.html)

 全国各地で様々な食育に関連する取り組みが進んでいる中でも、食の海外依存に歯止めがかかるどころか、TPP参加さえ課題に上る状況は、このような取り組みが全く空虚なものに思えてきます。「様々な問題が生じています」というそれぞれの内実・問題の本質、生じている原因とそれを許してきた私たちの責任を抜きには、正しい解決の方向は見いだせないのではないでしょうか。

さらに、食育に関する各地の取り組みの中で、食は「命をいただくもの」であり、「命の尊さ」を教える取り組みとして大きく発展しています。

この動きも、社会の現実の流れの中で、「尊い命」という念仏を教える状況になっているといえないでしょうか。正義の戦争、国を守るための自覚、いじめの問題、経済的格差の拡大、原発の問題、いずれも人間の命が条件付きであるいは制限付きでしか尊重されないという実態を解決する力にはなりえていません。

「尊い命」というものが実態として存在するのではなく、動物種としてのヒトは他の生命を食べて生きざるを得ないという現実、自ら育てた命を奪って生きるという営み、長い長い人間の殺し合いの歴史の中で見つめてきた生と死。このような歴史の積み重ねが、命を尊いものとして大切に思う人間の心を育んできたと思います。したがって、「命の尊さを知る」は人間の歴史、生き方など、様々な分野、角度から人間を見つめる課題であり、また、他の命に触れる、他の命の生き方を知る経験の中で形成されていくものでしょう。

このような「食育」に関する現実の問題を自覚しながら、他の命を思いやり、大切にする人間としての心の発達に農業、特に畜産が果たしてきた歴史的な役割を知り、今後も大切にしたい、人と動物との関係のあり方を探るために、今までの大学での研究の中で得たものをまとめてみました。これは研究の中での動物とのふれあいの例ですが、畜産という営みが、ヒトが人として生きる上で大きな役割を果たしてきたし、これからの社会にますます重要な意義を持つことを感じて頂ければ幸いです。

プレゼンテーション「食育の本源〜命の大切さ〜「ヒトとして生き、人として生きる」

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