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2013.01.15

草地への鶏ふん焼却灰の施用について

黒ボク土壌の草地では土壌改良資材の施用が不可欠

 九州高原地域の大部分の草地土壌は、火山灰を母材とする黒ボク土壌であり、非常に酸性が強く、リン酸欠乏や苦土欠乏を生じやすく、牧草生産の低下や家畜の生理的障害を引き起こすこともある。このために、黒ボク土壌においては、石灰質資材やリン酸質資材などの土壌改良材の施用は草地造成や草地管理において不可欠な作業である。

 大分県で用いられている草地管理こよみにも、採草地における年間必要肥料成分量としてリン酸150ha、苦土石灰500haと記されている。

資材施用は労力・経済的に大きな負担

これだけの資材を毎年施用することは各牧場にとって労力的にも、経済的に大きな負担となっている。特にリン酸質資材の費用はかなりの高額となっている。最近では、窒素源を硫安にする安価な肥料を使用する牧場も多く、土壌の酸性化が進み草地の裸地発生の原因ともなっており、頻繁な石灰質資材の施用が必要になるという問題も起こっている。

リン酸質肥料資材の資源は有限

 酸性化が進みやすい黒ボク土壌では植物が吸収できる可給態リン酸が不足し、草生産の制限要因となる例が多く、多量のリン酸施用が必要である。しかし、リン酸質資材の原料は有限な資源であり将来的な枯渇が危惧されており、対応策の検討が不可避となっている。

廃棄物有効利用としての鶏ふん焼却灰の利用

 鶏ふん焼却灰は強いアルカリ性を示し、リン酸やMgなどのミネラル含量も高く、土壌改良材として使用可能ならば、畜産廃棄物の再生利用として積極的に有効活用したい。現在、供給は安定しているようで、安価に入手することができている。

 平成24年の草地調査では、酸性化が進んでいると判断される牧場の多くで春の鶏ふん焼却灰施用による牧草生長の著しい改善効果が認められた。

鶏ふん焼却灰を今後どう使っていくか

 鶏ふん焼却灰の成分組成は、由来する鶏群の種類(ブロイラーか産卵鶏か、成鶏か育成か)や使用された飼料の構成などによって大きく異なるが、主な特徴を以下のようにまとめることができる。

1)pH10以上とアルカリ性で、石灰およびリン酸含量が高く、土壌改良効果が高い。

2)カリ含量が1215%程度と高く、年間の草地への施肥を鶏ふん焼却灰+基準通りの化学肥料とすると、カリ過剰となる場合もある。この対策として、いくつかの牧場で採用されている焼却灰を用いた場合の化学肥料として尿素を単肥で用いる方法は適切であると判断される。

3)形状が細かい粉状であるため、散布作業に苦労している牧場が多く、機械作業の方法について工夫をする必要がある。

4)微量成分として亜鉛含量が高く、土壌中への蓄積や流亡に十分注意する必要がある。土壌中の重金属の蓄積防止にかかわる管理基準として(環境庁, 昭和59年)、土壌(乾土)1堙たり亜鉛120咾鬚海┐覆い茲Δ砲垢詆要があることが定められている。土壌中亜鉛含量の動きに注意しながら鶏ふん焼却灰施用を行う必要がある。

5)草地への鶏ふん焼却灰施用は土壌表面施用であり、粉状のまま草地表面に長期間残る。また、鶏ふん焼却灰中のリン酸は、く溶性(植物根が分泌する有機酸によって溶ける)であり、亜鉛はアルカリ条件では不溶性であり、これらの成分は土壌中への浸透が遅く、表土の浅い層に蓄積しやすいと考えられる。これらのことは、鶏ふん焼却灰施用は酸性矯正には即効性があるがリン酸などの肥効が遅いこと、また、降雨によって粉のまま流亡する可能性があることを示している。今後、土中への施用などの方法の検討が必要と思われる。

 以上のような特徴を総合的に見ると、鶏ふん焼却灰の草地施用の方針を当面次のようにするのが適切と考えられる。

○多量の連用は避け、一定の目途(例えば、牧草が簡単に引き抜ける状態になっているとか、pH5.5以下になったら)をもとに施用を考える。

○草地土壌中亜鉛含量の定期的なモニタリングを実施し、その経過を見ながら施用量を決定する。


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