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2012年第1回草地調査のまとめ

 例年と比べた場合、今年の1番草の特徴は二つありました。

一つは、牧草の生長の勢いが良いと感じられる草地がいくつかあったことです。

1)牧草の生長が良好であったところは、焼却灰を散布した効果や石灰質肥料の施用に努めた成果がでたのではないかと思われます。昨年より最も改善が著しい牧野はC牧場で、今年は裸地が認められず、牧草(イタリアンライグラス)が順調に生育しています。焼却灰による酸性矯正効果は、リン酸の吸収を高め、根の発達を促すことで、春肥の効果も高めます。今後も土壌pHのチェック、土壌診断を継続的に実施し、必要に応じて焼却灰等の散布による土壌改良をおこなうことが、安定した草地生産の基盤です。

   
イタリアンライグラスの生長が順調な草地  根張りも良く、十分な密度もあります

 二つ目は、草種構成が大きく変わった草地が見られたことです。

2)昨年の一番草と比べて草種の割合が大きく変わった草地がいくつかあります。原因については、昨年、不純な天候により刈り取り時期が大きく動いたことによると思われます。刈り取り時期が例年より前後に動くことが草種構成にどのような影響を及ぼしたかは、今後、各牧場の昨年の刈り取り作業経過の調査をもとに情報を整理したいと思います。

主要な牧草(イタリアン、オーチャードグラス)が減少あるいは消失した草地(N、I、T、M、IT、G、NG)については、各牧場の今後の利用管理方針を確認した上で、具体的な対応策を決める必要があります。この場合、草地ごとに、牧草がどのように消えたか、その原因を明確にしておくことが今後の管理にとって重要です。オーチャードが夏枯れで消えたのか、イタリアンが発芽・生長出来なかったのか、そして、その原因となる可能性のある要因として、肥料はいつ、何を、どのくらい施用したか、刈り取りはいつ頃だったか、土壌分析の結果は、天候はどうだったか、などを総合的に判断して、今後の管理に活かすべきことを把握しておくことが重要です。

   
 イタリアンが減少し、春雑草が覆う  イタリアンがほとんど消失した
   
 主要な牧草はほとんど消失  オーチャードは消失し、地下茎型のイネ科草が
主体となった

 今後の対応策としては、イタリアンが多かった草地(I、M、IT、NG)の場合、イタリアンの割合の減少は1番草と2番草の収穫量の減少になりますが、3番草を例年通り9月下旬に刈り取ることが出来れば、来年以降はまた、イタリアンの割合が次第に回復し、収穫量も回復します。

 
 この程度のイタリアンの個体数でも来年には
回復する可能性がある

このように、これまでと同様の管理を維持しながら少しずつイタリアンを回復するという省力で経費をかけない手段を選ぶことも可能です。オーチャード・トールフェスク主体草地にするために更新する場合は、更新時にイタリアン抑制対策を取ることが必要ですし、更新後数年でイタリアン優占になる可能性が高いことを牧場に伝えておくべきです。

 3)草地の維持管理経費を出来るだけ節減するために、肥料施用法の再検討に取り組んでみましょう。

牧場の維持管理における肥料費の負担はかなり重いのが実情であり、少しでもその負担を軽くする方策を考える必要があります。経費だけではなく管理労力・時間の軽減にもつながります。現在の草地の施肥基準はオーチャード・フェスクの寒地型永年草草地を想定して作られたものであり、現実のイタリアン・夏型1年生イネ科草草地の実態には必ずしも適合していない面があります。また、温暖化という条件を考慮しながら、オーチャードの夏枯れ対策を重視した施肥設計も必要になっています。各牧場の経験や草地関係の技術者・研究者の知恵を集めて新しい肥料施用法を検討する機会を保つことが望まれます。これまでの草地調査の積み重ねで得た経験から提案できる施肥法については、検討の素材として別途提案したいと思います。

 

<久住 牧野の博物館>

 

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