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 「九州高原地域における牧草地の新しい方向を探る採草地」

A現状
 九州高原地域の牧草地は、寒地型牧草オーチャードグラスとトールフェスクを基幹草種として造成されてきた。1980年以降に造成された久住、直入、玖珠、阿蘇地域の採草用牧草地植生の経年変化を調査した結果、これらの地域の牧草地は次の3タイプに大別できる。

 オーチャード・フェスク主体で維持されている草地    (15*)
 オーチャード・フェスクの株化(密度減少)が著しい草地 (25
 イタリアンメヒシバ(イヌビエ)交代草地       (60
                     (*調査55草地中の%)
 オーチャード・フェスクを基幹草種とする草地を長期間安定的に維持することは困難であることを示している。

B背景
 九州における寒地型牧草地の現状と関連する要因として次の点がある。
 ・九州の気候条件(高温、多雨)のもとでは、

a.オーチャード・フェスクは、
 ・夏季の夏枯れ、生育減退が避けられない
 ・春の生育が早く、1番草の伸び、ステージの進行が早く刈り遅れを生じ易い
b.
1番草および2番草刈取り時に天気が悪くなることがしばしばあり、刈り遅れ、刈取りができないことがある
c.
夏季の夏型一年生雑草の生長が極めて旺盛

 ・地域農業の特徴から、

a.久住をはじめ九州の畜産農家は複合経営であり、稲作、野菜作との労働競合がおこる
 (例.5月の1番刈りは田植えと重なる)

 ・オーチャード・フェスクの草種としての特徴から、

a.株化が進み、裸地ができ易い
b.
いったん株化し密度が下がると自力回復が困難(勢力範囲が拡大できない)
c.
1番草は出穂し、草丈が高くなるが、2,3番草では葉だけで草丈が高くならない

 以上の特徴から、九州のオーチャード・フェスク主体草地では、

a. 密度低下が著しく、収量低下、雑草侵入が起こりやすい
b.
夏型雑草の繁茂で牧草が被圧されることが多い
c.
牧草の雑草に対する被圧力が弱く、牧草の力でギシギシなどの防除をすることが難しい

 

 

 

 

C結論
 九州におけるオーチャード・フェスク主体草地の安定的維持には、相当の労力と経費をかけないと、収量を長期間安定して維持し、雑草の侵入を抑えることは困難である。
 
D方向
 地域の環境と利用方式に適応した草地の有り方を示唆する現象を、草地の現状の中に見出すことができる。

a.2回刈り利用、放牧との兼用利用の草地、施肥量が少ない草地などにオーチャード・フェスクが比較的安定して維持されている。
b.
1番草、2番草はイタリアンで3番草はメヒシバ(イヌビエ)となり、自然下種による交代草地が安定して成立している。
c.
かなりの草地に地下茎型イネ科草クサヨシの自生が拡大している。

 このような観察に基づき、今後の草地のあり方、そのための研究方向として、次の3つを提起する。

  ・イタリアン夏型1年生イネ科草交代草地の積極的な利用法の確立
      
・施肥法、刈取り法の再検討(倒伏防止、硝酸態窒素の低減)
      ・異なる草種、品種で置き換える可能性(イタリアン品種、暖地型牧草の利用の検討)
      ・飼料としての利用法、給与法の検討(イタリアンとメヒシバ、イヌビエの使い分け)
      ・堆厩肥施用の導入(3番草刈取り後に耕起しても翌春にはイタリアンになる)

  ・オーチャード・フェスクの維持管理法の再検討
      
・刈取り利用法の再検討(2回刈り、放牧利用との組み合わせ)
      ・密度維持・回復のための更新、追播法の確立

  ・新しいタイプの草地を探る
農家の老齢化と労働力の減少が進行する中で、管理がもっと容易な(手を抜いて)草地、天候や労働配分の都合で刈り取りが遅れても重大な害をもたらさない草地、一時的な植生の悪化が起こっても自力で回復可能な草地を実現する可能性をもった草種としてリードカナリーグラス(クサヨシ)の利用をはかる。
      ・刈り取り時期と嗜好性、栄養価の関係
      ・刈り取り、施肥法と雑草抑制力、密度回復力との関係
      ・造成法の確立

 九州高原地域の採草牧草地の有り方として、以上の3つの方向が考えられ、どのような牧草を飼料として必要とするか、草地の利用管理にかけられる労力、資金などの農家の経営、労力、畜産部門の位置づけなどの実状に応じてどのタイプの草地として利用するかを選択する。

<久住 牧野の博物館>

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